鈴木さん
最近私の周りに咳が続いて、「喘息」と診断される人が増えています。
喘息って大人になってからもなるんですか?
なるとすると何が原因ですか?
喘息の総患者数は、世界的に増加の傾向にあることをご存じでしょうか。
子どもに多い印象のある喘息ですが、実は大人になってから発症するケースも増えており、
成人喘息の約40%が原因を特定するのが難しい「非アトピー型」であるため、治りにくく
慢性化しやすいとされています。
医師
この記事は、きずなクリニックの呼吸器専門医である アディティアがお話します。
近年喘息の患者数は増加が続いており、世界では約2億6,200万人が罹患、日本では約918,000人の患者さんが
喘息の治療を受けており、日本の成人喘息有病率は、3.14%(1985年)から10.4% (2017年)と増加しています。
人口比からすると、成人の20~30人に1人は喘息持ちとなり、喘息は身近な病気でいつ誰が発病しても
不思議ではありません。
ここでは、喘息に対する正しい理解と知識を持っていただくことで、適切な自己管理・予防・症状のコントロール
が選択できるようになることを目的にしています。
1.喘息とは?
– そもそもなぜ咳が出るの?
– 今の症状は喘息なのか?
2.喘息の原因は?
– 喘息は治りにくいのか?
– 食物アレルギーで喘息は起こる?
– 喘息は遺伝するのか?
3.喘息の治療法は?
4.喘息の予防方法は?
– 食生活で気をつけること
– おすすめの運動
について解説いたします。
きずなクリニックはインドネシア・ジャカルタにある日系クリニックです。
14年間ジャカルタで日本人の健康をサポートしてきた、豊富な経験を持つ医師と 日本の看護師資格を持つ看護師
および日本人の医療関係者がアドバイザーとして常駐しています。
日本とは異なる環境の中で病気になると、言葉・医療体制・治療方法など、不安に感じることも多いことでしょう。
きずなクリニックでは、ひとりひとりの患者さんの不安に寄り添い、確かな医療技術と日本の医療を熟知したスタッフが
患者さんとともに最良の方法を一緒に探していくことを目指しています。
病気の時だけでなく、健康面で気になることがある場合には、どんなことでもお気軽にご相談ください。
目次
喘息とは?
喘息とは、肺に通じる空気の通り道である「気道」に慢性の炎症が続き、気道が狭くなることで、
呼吸困難や咳き込みを繰り返す病気で、正式名称は「気管支喘息」といいます。
喘息発作がおさまって、すっかり治ったように見えても、気道の炎症は静かに持続していますので、
少しの刺激で気道が過敏に反応してしまい、咳や痰の症状、呼吸困難を引き起こし、
再発させてしまうことがあります。
残念なことに、この「気道の過敏性」は一度獲得するとなかなかな消失しないといわれています。
そもそもなぜ咳は出るの?
咳は外から侵入する埃、ウイルス、細菌などの異物を吐き出して、肺や器官などの呼吸器を守るための防御反応です。
咳は生体にとって大切な防御反応ですので、むやみに咳を抑えてしまうと侵入した異物を外に出すことが出来ず、
かえって状態を悪化させる可能性があります。
一方で、喘息による場合の咳は、慢性的な気道の炎症により気道が狭くなっていることから、
本来なら咳をする必要のない少しの刺激でも気道が敏感に反応して咳が出ている状態のため、
出来る限り早く抑えた方がいい咳です。
今の状態は喘息?
以下の3大症状がそろってみられる場合は、喘息の可能性がかなり高いといえます。
①息苦しさ
気道が狭くなっているために十分に呼吸が出来ず、息が苦しくなります。
息を吐くときに苦しい、息切れなどの症状がみられます。
②ゼーゼーする
息をする際に喉や胸から「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」という音(喘鳴)がしたり、
喉や胸がごろごろするなどの症状がみられます。
③咳が出る
激しく咳が出て止まらなくなったり、咳で目が覚めたり、明け方に酷くなるなどの症状がみられます。
ただし、これらの症状が全て揃っていない場合でも喘息というケースもあります。
激しい咳や喘鳴はなく、多少の息苦しさがある、また、喉や胸の痛み、違和感などがある場合も、
気道が狭くなっていることから起こっている可能性がありますので、喘息が疑われます。
症状を軽視しないで医療機関を受診するようにしてください。
喘息の原因は?
喘息は、15歳までに発症する「小児喘息」と、大人になってから発症する「成人喘息」の2つに分けられます。
小児喘息の9割以上は、ダニ、カビ、ハウスダスト、ペットの毛、フケ、花粉、食品など特定のアレルゲンが
きっかけとなって起こるアトピー型です
一方で、成人喘息の約4割はアレルゲンが特定できない非アトピー型で、風邪、タバコ、アルコール、大気汚染、
鎮痛解熱剤、冷気、天候の変化、ストレス、肥満、疲労などの要因が重なって起こります。
喘息は治りにくいの?
喘息の原因は、気道の慢性的な炎症ですが、そのきっかけとして上記の様に特定のアレルゲンで起こる「アトピー型」と
原因が特定できない「非アトピー型」に分けられます。
非アトピー型が多い成人の喘息は、感染症、大気汚染、天候、喫煙、アルコール、薬剤、化粧品、ストレス、過労、
肥満、月経、妊娠など、原因が多岐にわたり、それらが重なり合って発症・悪化すると考えられることから、
小児喘息に比べて一般的に治りにくく慢性化しやすい傾向があります。
食物アレルギーで喘息は起こる?
小児喘息の90%は特定のアレルゲンに対するアトピー型の喘息ですので、ある特定の食品がアレルゲンとなる場合も
考えられます。
特定の食品によって引き起こされるアレルギー反応を食物アレルギーと呼びますが、
軽症の場合は、発赤・発疹・かゆみが出る程度ですが、症状が重くなると息苦しさ・咳、喘鳴を伴った呼吸障害が
起こることもあります。
食物アレルギーと喘息はしばしば合併して起こることも多く、かつ、食物アレルギーの存在が喘息症状のリスクを
高める要因となる可能性もありますので、可能性のある食物が疑われる場合は、自己流の食事制限などは行わず、
医師に相談するようにしてください。
喘息は遺伝するのか?
両親のどちらかが喘息の既往がある場合、お子さんが喘息を発症するリスクは3~5倍高くなる
というデータがありますが、両親に喘息の既往がなくても喘息を発症するケースもあります。
喘息は、環境因子と遺伝因子の相互作用によって発症するといわれていますので、仮に遺伝因子があったとしても
産まれた後の生活環境によって左右される部分がありますので、必ず喘息を発症するわけではありません。
喘息の治療法は?
お薬による症状のコントロールが主になります。
①長期管理薬:気道の慢性的な炎症を鎮め、発作を起こさないようにする目的
吸入ステロイド+気管支拡張剤(長期間作用性β2刺激薬)のほか、抗アレルギー薬など
②発作治療薬:発作が起こった時にのみ使用、発作を鎮めるための目的で使用
気管支拡張薬(短期間作用型β2刺激薬)のほか、経口のステロイドなど
喘息の長期管理薬として使用される吸入ステロイド薬は、少ない用量を気道に局所的に投与しますので、
副作用が少なく、長期間の使用が可能です。
ただし、成長期のお子さんでは影響が出る可能性はゼロではありませんが、自己判断で吸入薬をストップしてしまうと
喘息が悪化して呼吸困難や低酸素症などの危険性もあり、吸入ステロイドを使うリスクより使わないリスクの方が
大きいと考えらえます。
喘息の予防方法は?
喘息の発作が起こるリスクを軽減するには、日ごろから発作を誘発する原因と考えられるものを
遠ざけることが重要です。
ただし、アトピー型の方は悪化要因が比較的分かりやすいですが、非アトピー型の方は原因となるアレルゲンを
特定できないため、何が要因となっているのか探すのが難しい場合があります。
非アトピー型の方は、ご自身の生活環境、生活習慣、ストレス、疲れが溜まっていなかったか、
運動、内服薬、季節の変わり目など、発作が起こる際に共通点はないかどうか、色々な要因を検証してみましょう。
そこで共通する項目がある場合には、出来るだけその状況を避けるようにしてください。
食生活で気をつけること
まずはアレルゲンとなる食物がある方は原因となる食物を避けるようにしてください。
食生活で重要なことは、3食規則正しく食べることです。
食べる量が多すぎると胃が横隔膜を圧迫し、喘息を悪化させることがありますので、腹八分目を心がけましょう。
また、刺激物(辛すぎるもの、酸っぱすぎるもの)、アルコール類、熱すぎるもの、冷たすぎるもの、炭酸飲料などは
気道を刺激しますので、避けるようにしてください。
オメガ3脂肪酸を多く含む魚(シャケ、マス、イワシなど)の摂取により、
気道の炎症や免疫をコントロールできるという研究結果が報告されていますので、
積極的に摂るようにしましょう。
また、咳を鎮める食べ物として、レンコン、大根、長ネギ、ショウガ、蜂蜜、ゆずなどがあります。
こちらもお食事に取り入れるようにすると良いでしょう。
喘息にいい運動
激しい運動により、一時的に咳、喘鳴、呼吸困難などの症状が起こる現象を「運動誘発性喘息」といいます。
運動を始めて数分で起こり、中止すると30分程度で自然におさまります。
運動誘発性喘息は、冷たく乾燥した環境や激しい運動を続けた場合に起こりやすいことが分かっています。
また、喘息の症状が中等度以上の方ほど強く症状が出る傾向にあります。
全ての喘息の方にも安心して行っていただける運動としては水泳があります。
特に屋内での水泳は、室温・水温が一定に保たれ、湿度も高く、気道を刺激する可能性が低いことからお勧めです。
逆に激しく長時間持続する運動(陸上競技、サッカー、バスケット、マラソンなど)は
咳を誘発しやすいので運動誘発性の喘息が出やすい方は避けてください。
まとめ
近年、喘息罹患者数は増加しつつあり、成人になってから喘息を発症するケースも増えています。
喘息は身近な病気でいつ誰が発病しても不思議ではありませんが、成人喘息の約40%は原因を
特定するのが難しい「非アトピー型」であることから、治りにくく慢性化しやすい傾向がみられます。
このため、正しい理解と知識を持つことが適切な自己管理・予防・症状のコントロールを行うためには
重要です。
きずなクリニックでは、新しく呼吸器専門医を迎え、「喘息」の治療にも力を入れています。
「咳が続いて苦しい」、「この症状は喘息になのか」、「喘息をうまくコントロールしたい」
など、喘息に関するお悩みをお持ちの方は是非当クリニックにご相談ください。
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お気軽にご連絡いただければと思います。