ホーム医療情報インドネシア特有の下痢を起こす疾患について インドネシア特有の下痢を起こす疾患について / 医療情報 / By kizuna-clinic-admin 黒川さん インドネシアに来たばかりですが、早速洗礼を受け 下痢になりました。今後も起こる可能性のある下痢について、インドネシアならではのものを教えてください。 インドネシアに来られたばかりの方は、食べ物や水にあたって下痢になる方が多いですね。加えて乾季から雨季に変わる、10月から12月にかけて下痢になる方が急に増えるという特徴があります。 医師 この記事は、きずなクリニックの医師である マチルダがお話します。インドネシアでは10月から12月にかけて体調を崩される方が増えます。特にこの時期は下痢が急増し、通常の2倍から3倍になります。今回はインドネシアで多くの方が経験する「下痢性疾患」について、1.下痢とは2.なぜインドネシアでは10-12月に下痢が多いのか3.インドネシア特有の下痢とその特徴4.下痢になった時の対処をお話します。 きずなクリニックはインドネシア・ジャカルタにある日系クリニックです。14年間ジャカルタで日本人の健康をサポートしてきた、豊富な経験を持つ医師と 日本の看護師資格を持つ看護師 および日本人の医療関係者がアドバイザーとして常駐しています。日本とは異なる環境の中で病気になると、言葉・医療体制・治療方法など、不安に感じることも多いことでしょう。きずなクリニックでは、ひとりひとりの患者さんの不安に寄り添い、確かな医療技術と日本の医療を熟知したスタッフが患者さんとともに最良の方法を一緒に探していくことを目指しています。病気の時だけでなく、健康面で気になることがある場合には、どんなことでもお気軽にご相談ください。 健康面について相談する 目次 Toggle下痢とは?なぜインドネシアでは10-12月に下痢が多いのか湿度が高くなるため:自律神経の乱れ:その他:インドネシアに多い下痢を起こす病気と下痢の特徴腸チフス(細菌性):アメーバ(原虫性):デング熱(ウイルス性):A型肝炎(ウイルス性):下痢になったら・・・?まとめ 下痢とは? 下痢とは、「水分含有量の多い便を頻回に排泄する状態」と定義されています。しばしば、嘔気・嘔吐・腹痛・発熱などの症状を伴います。 下痢の持続期間により、14日以内であるものを「急性下痢」、15日以上を「遷延性下痢」、30日を超えるものを「慢性下痢」と分類します。急性下痢の多くはウイルスや細菌の感染、食あたりによるものです。それ以外に暴飲暴食や刺激物・アルコールの摂りすぎなど、生活習慣の乱れに基づくものがあります。これに対し、慢性下痢の原因は 感染症以外のものが大半であるとされています。 ウイルスによる症状の出方は『小腸型』と言われ、毒素により腸管分泌が促進することによって起こります。水様便、嘔吐を伴いやすく、腹痛はあっても軽度で血便は無いことなどが特徴です。一方で細菌感染による『大腸型』は、腸管粘膜の障害が起こるため、血便、粘血便、強い腹痛、しぶり腹、発熱などが認められます。 なぜインドネシアでは10-12月に下痢が多いのか 湿度が高くなるため:雨季に入ると湿度が高くなり、細菌やカビが繁殖しやすくなります。細菌は基本的に高温高湿を好み、種類により異なりますが、多くは気温20℃以上になると活発になり、25℃以上・湿度70%以上で一気に増殖します。食品は細菌やカビの繁殖で早く傷みやすくなり、加熱により食品内の細菌やカビは死滅させることができたとしても、それらの出す熱に強い毒素が食品内に残ると感染が起こります。自律神経の乱れ:雨季は気温や気圧の変化が大きくなり、体がこれを調整しようとするストレスで、多くのエネルギーを消耗します。自律神経のバランスが乱れるため、頭痛、肩こり、睡眠不足、倦怠感など、多くの症状が現れることがありますが、自律神経の乱れは同時に胃腸にも影響を与えます。いつもより消化や吸収が上手くいかなくなり、胃痛や下痢・便秘の原因となります。その他:雨季はマンゴーのシーズンでもあり、マンゴーは果物の中でも特に糖が多いことで知られています。こうした糖を多く摂取すると、もともとおなかが弱い方の中には、糖が小腸で吸収されずにそのままの状態で大腸にまで到達してしまうことがあります。大腸ではこの糖に対し「水を出して」排除しようとするため、下痢の症状を引き起こすことがあります。 インドネシアに多い下痢を起こす病気と下痢の特徴 インドネシアで多い、下痢を起こす病気としては、腸チフス(サルモネラ菌)、アメーバ、デング熱、A型肝炎などがあります。腸チフス(細菌性):サルモネラ菌による糞口感染(サルモネラ菌保有者が手を適切に洗わないで作った食べ物を食べることなどで感染)により発症します。水様と粘血が混ざったような便が出ます。1日に10回以上と頻度が多いのも特徴です。アメーバ(原虫性):赤痢アメーバの嚢胞で汚染された食べ物や飲み物を食べることによって感染する寄生虫感染症です。常に便意を感じ、排便を制御することができず1日に50回以上排便があることもあります。臭いは腐った卵のようで、便は通常粘性で緑がかっています。血液が便に混ざることもあります。激しい嘔吐を伴い、排便とともにお腹が痛むことが特徴です。デング熱(ウイルス性):ネッタイシマカやヒトスジシマカが媒介し、ウイルス保有の蚊に刺されることにより感染が成立します。直接的なヒトからヒトへの感染はありません。発熱、頭痛、関節痛の頻度が高いものの、筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐といった症状がみられることもあります。腸チフスほど回数は多くありません。便は柔らかくて水っぽいこともありますが、硬い便が出ることもあります。A型肝炎(ウイルス性):糞口および直接接触(A型肝炎に汚染された食べ物や飲み物を食べる、またはA型肝炎を患っている人に手で直接接触する)によって感染するウイルス感染症です。吐き気、嘔吐、倦怠感などの症状も出ることがあります。通常、濃い粘土色の柔らかい便が出ます。 下痢になったら・・・? 病気の種類によって薬の種類や対処方法も異なりますので、自己判断でお薬を飲んで様子をみるのではなく、なるべく早めに医師の診察を受けるようにしてください。特に数日たってもよくならない、どんどん症状が強くなる、水が飲めないような場合は、受診をお勧めします。下痢をしているときには、脂っこい食事や辛いもの・アルコールやコーヒーなどの刺激物を控え、冷たいものの食べ過ぎ・飲みすぎには注意しましょう。また、下痢とともに身体の水分が便と一緒に出てしまうため、脱水状態になりやすいです。皮膚や口の中が乾いているな、と思ったら脱水状態にあるサインです。経口補水液なども上手に利用し、適度な水分補給を心がけましょう。 まとめ インドネシアは赤道直下の熱帯地域に位置し、高温多湿の熱帯性気候で、乾季(4月~9月)と雨季(10月~3月)に分かれます。雨季は湿度も高くなり細菌やカビが繁殖しやすくなる時期です。また、季節の変わり目でもありますので、自律神経が乱れ 体調を崩しやすくもなります。季候が雨季に変わる時期に起こりやすい、インドネシア特有の下痢性疾患には、・腸チフス(サルモネラ菌)・アメーバ・デング熱・A型肝炎があります。それぞれの疾患について治療法も異なりますので、自己判断でお薬を内服されるのではなく、なるべく早めに医師の診察を受けることをお勧めします。 きずなクリニックでは、下痢はもちろん様々な感染症、疾患に対して原因を追究してから治療を行う方針のため、様々な検査がクリニック内の検査室で可能な体制をとっています。原因がはっきりしないことで健康の不安がある方のご相談を、WhatsAppやお電話で24時間受け付けております。お気軽にご連絡いただければと思います。 健康相談をする