息切れ、胸痛、動悸・・・。新型コロナウイルス感染後の心臓への影響

胸痛 心臓の障害
男性患者

石川さん

新型コロナウイルスに感染しましたが、ほとんど症状はありませんでした。
軽快した後から、息切れ・胸痛・動悸が出てきて、今もまだ続いています。

新型コロナウイルス感染時の症状と後遺症の程度は、実は一致しないことが多いです。
むしろ軽症の方のほうが、後遺症が重い傾向も見受けられます。

きずなクリニック医師

医師

この記事は、きずなクリニック勤務 心臓専門医である ステファニーがお話します。

新型コロナウイルス感染症の後遺症に関する研究が進むにつれ、心臓の障害、心筋炎が相次いで報告されるように
なってきました。

医学誌「JAMA Cardiology」には、新型コロナウイルス感染症から回復した患者さん100例に心臓MRIの検査を行うと
78%に異常がみつかり、うち60%に心筋炎の所見がみられた(JAMA Cardiology. 2020 Jul 27)
という報告がされています。

また感染後に心エコー検査を行ったところ、69カ国 合計1216人の患者さんの約半数に何らかの異常を認めている
(Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2020 Jun 18)という論文も出されています。

今回は、心臓の専門医が
1.新型コロナウイルスがなぜ心臓に影響を及ぼすのか
2.どのような時に受診すべきか
3.治癒はするのか

について解説いたします。

きずなクリニックはインドネシア・ジャカルタにある日系クリニックです。
14年間ジャカルタで日本人の健康をサポートしてきた、豊富な経験を持つ医師と 日本の看護師資格を持つ看護師
および日本人の医療関係者がアドバイザーとして常駐しています。

日本とは異なる環境の中で病気になると、言葉・医療体制・治療方法など、不安に感じることも多いことでしょう。
きずなクリニックでは、ひとりひとりの患者さんの不安に寄り添い、確かな医療技術と日本の医療を熟知したスタッフが
患者さんとともに最良の方法を一緒に探していくことを目指しています。
病気の時だけでなく、健康面で気になることがある場合には、どんなことでもお気軽にご相談ください。

新型コロナウイルスの感染者の多くは軽微な症状しか示さず、3人に1人はほぼ無症状であるとされます。
ところが、症状が軽いかまったくない場合でも、心臓に炎症などの障害が出ることが徐々に明らかとなっています。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか。


一つは新型コロナウイルスが直接心臓を攻撃することによるダメージです。

新型コロナウイルスは、ヒトの細胞表面に発現しているアンジオテンシン変換酵素(ACE)2を認識して感染します。ACE2は、肺だけでなく消化管、腎臓、心臓、血管にも発現していることから、新型コロナウイルスは
心臓を攻撃しやすい性質を持っています。

もう一つは、体内でおこる過剰な反応によるものです。

免疫細胞は異物が体内に侵入してくると、炎症性の「サイトカイン」を誘導することでウイルスに抵抗しようとします。
体を守るためには必要な反応ですが、炎症性サイトカインが必要以上に分泌されると、体内で過剰な炎症反応が
引き起こされ、血管内で凝固異常(血栓)が生じます。
このように血が固まり血栓ができやすくなることで血管が閉塞し、血流が障害されて心臓がダメージを受けます。

息切れ・胸痛・動悸・・・、心臓に問題があるサインが出たら、いつ病院に行くべきか?

コロナ後遺症心臓への影響 いつ病院に行くべきか

動悸、めまい、胸痛、息切れ、疲労感、ブレインフォッグなど、新型コロナウイルスの「後遺症」で
よく見られる症状は、実は心臓が原因である可能性があります。
このうち心臓に問題が起こっていると考えられるサインには、
①息切れ、②胸痛、③動悸 があります。

こうした心臓に関係する症状が出た場合、いつ病院を受診する必要があるのでしょうか。

 

息切れ

息切れがひどい場合は、医師に相談してください。
息切れ自体が必ずしも深刻な問題の兆候であるとは限りませんが、O2が低い(92%未満)場合は、注意が必要です。
新型コロナウイルス感染後には、治療や療養のため体を動かす機会が少なくなります。
このため、軽い運動で息切れすることがありますが、実は息切れは単に肺だけが原因ではありません。
肺機能は正常でも、心筋の炎症のために心臓がうまく動かない場合は、息切れが発生します。

息切れに加えて、下記の症状がある場合にも「心不全」の可能性が否定できないため、早急な受診をお勧めします。

  • 特に労作時の息切れ
  • 倦怠感
  • 横臥時の息切れ
  • 脚のむくみ
  • 夜間の頻尿(注:男性の夜間の頻尿は、前立腺肥大の一般的な症状です。)

 

胸痛

重度の胸痛がある場合、特に持続していて、吐き気、息切れ、立ちくらみがある場合は、受診をお勧めします。
これらの症状は、心臓発作の兆候である可能性があります。

 

動悸

頻脈や動悸がある場合は、すぐに受診してください。
心拍数の一時的な増加は、脱水症など、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。
特に熱がある場合は、十分な水分を摂ってください。
そのほか頻脈や脈の乱れが原因で起こる症状には、次のものがあります。

  • 胸の中で心臓が急速または不規則に鼓動するのを感じる
  • 特に立っているときに、頭がおかしくなったりめまいがしたりする
  • 胸の不快感

新型コロナウイルス感染症による心臓の炎症は治癒するのか?

新型コロナウイルスは心臓に影響を及ぼしますが、回復までにどのくらいかかるのか、心機能にどのように影響するか、
実はまだはっきりとは分かっていません。

心臓の炎症が時間の経過とともに(自覚症状もないままに)治癒する可能性もあれば、心臓内に残った傷痕(血栓)が
将来、心不全などの原因になったり、年を重ねて発症するより深刻で長期的な健康問題に発展する可能性も否定はできません。

上記の「いつ病院に行くべきか?」で示した症状は、ひとつの受診の目安ですが、これに関わらず、
現在少しでも 息切れ・胸の痛み、動悸などの症状がある方は、念のために検査されることをお勧めします。

まとめ

新型コロナウイルスは、

1.心臓に多く発現している、アンジオテンシン変換酵素(ACE)2を認識して感染し、
2.体内で過剰な炎症反応を起こさせ、その結果、血液凝固異常(血栓)により血流を阻害させる

ことにより心臓にダメージを与えます。

「息苦しい」・「胸が痛い」・「動悸」は、実は心臓に問題が起こっているサインです。
受診の目安を参考に、少しでも気になることがあれば一度検査を検討されることをお勧めします。

きずなクリニックでは、コロナウイルス感染後に起こる後遺症ケアに力を入れています。
何か気になる症状がある方はどんなことでもご相談頂ければと思います。

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お気軽にご連絡いただければと思います。