ホームCOVID19匂いが分からない、変な匂いがする・・・新型コロナ感染症後の嗅覚障害について 匂いが分からない、変な匂いがする・・・新型コロナ感染症後の嗅覚障害について / COVID19, 医療情報 / By kizuna-clinic-admin 田中さん 新型コロナウイルスに感染後、匂いを全く感じなくなりました。もう3カ月も経過するのに、変わらないです。元に戻らないのではないかと心配です。 後遺症として比較的長く残るものの中に、嗅覚障害があります。匂いが分からないと味の感じ方も変わるため、食事を楽しむことができず、苦痛を感じる方が多いです。 医師 この記事は、きずなクリニックの医師である マチルダがお話します。新型コロナウイルス後遺症の定義は定まっていませんが、米疾病対策センター(CDC)や英国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは「感染後4週間以上経過しても継続もしくは新たに発現するさまざまな症状」と表されています。ここでは、長引く後遺症の症状の一つである、「嗅覚障害」について、1.嗅覚障害を含む後遺症の実態2.嗅覚障害の原因3.治療方法について解説します。 きずなクリニックはインドネシア・ジャカルタにある日系クリニックです。14年間ジャカルタで日本人の健康をサポートしてきた、豊富な経験を持つ医師と 日本の看護師資格を持つ看護師 および日本人の医療関係者がアドバイザーとして常駐しています。日本とは異なる環境の中で病気になると、言葉・医療体制・治療方法など、不安に感じることも多いことでしょう。きずなクリニックでは、ひとりひとりの患者さんの不安に寄り添い、確かな医療技術と日本の医療を熟知したスタッフが患者さんとともに最良の方法を一緒に探していくことを目指しています。病気の時だけでなく、健康面で気になることがある場合には、どんなことでもお気軽にご相談ください。 健康面について相談する 目次 Toggle長引く後遺症の実態嗅覚障害の原因嗅覚障害の治療法嗅覚検査: ご自宅での嗅覚刺激トレーニング方法:まとめ 長引く後遺症の実態 新型コロナウイルス感染症にかかった人の4人に1人は、半年後も後遺症に悩まされているとの調査結果を、国立国際医療研究センターが報告しています。その症状としては、嗅覚障害7.7%、味覚障害3.5%、倦怠感6.6%、息切れ3.9%、咳2.4%、脱毛3.1%、記憶障害11.4%、集中力低下9.8%、うつの症状8.1%でした。記憶障害、集中力低下、うつの症状は嗅覚、味覚障害よりも多くみられました。そのほか、女性の方が「倦怠感」などの症状が出やすく、若い人、やせた人ほど「味覚・嗅覚障害」が起こりやすいとしており、嗅覚の異常は、発症から100日ほど経過しても10%あまり残り、半年後では 7.7%、約200日後に 5%ほど、1年後も1.1%続くとしています。 嗅覚障害の原因 「嗅覚障害」とは、嗅覚に何らかの異常が起こることをいいます。匂いが全く嗅ぎ取れないもの、本来の匂いではない変な匂いを感じるもの、感じるはずのな匂いを感じてしまうものなど様々です。嗅覚障害には下記のように、大きく分けて2種類があります。① 鼻水や鼻づまりによって匂いが嗅神経に到達できない「伝導性障害」② 嗅神経自体が障害を受ける「神経性障害」新型コロナウイルス感染後に嗅覚障害を起こす理由は、まだ十分に解明されてはいませんが、鼻水や鼻づまりのような症状がないにもかかわらず症状が起こることも報告されていること、また、新型コロナウイルスには神経に入り込みやすい特徴があることから、ウイルスによる直接的な神経の障害あるいは、神経周辺にある嗅細胞の支持細胞等への障害により、嗅神経の機能が阻害されている可能性が考えられています。 嗅覚障害の治療法 当クリニックで実施している治療について1.点滴治療:嗅覚障害に効果があるビタミン剤や炎症を抑えるお薬を投与します。2.内服治療:嗅覚障害に効果があるビタミン剤、お薬を処方します。3.嗅覚刺激療法:嗅覚の神経は再生すると言われており、匂いをそのイメージしながら嗅いでいただくことで神経の再生を促すことができると言われています。定期的に嗅覚検査を行っていき、どの程度嗅覚の能力が戻ってきているかをモニタリングしていきます。 嗅覚検査:「 嗅覚検査」とは、嗅覚が正常であるかどうか判定するために行う検査です。症状により、① 匂いを感知する力を測る「閾値検査法」、② 匂いを嗅ぎ分ける力を測る「弁別検査法」、③ 何の匂いか分かる力を測る「同定検査法」の検査を行います。 ご自宅での嗅覚刺激トレーニング方法:様々な匂いをそのイメージをしながらかいでいただくことで、嗅神経の再生を促し、回復を促すトレーニングです。・アロマオイル(ローズマリー・ラベンダー・レモン・ユーカリなど)・コーヒー・お茶など、好きな3つほどの匂いを1日2回朝晩10秒程度12週間嗅ぐという方法です。【トレーニング方法】① 鼻から3cmほど離した位置に置く② 口を閉じて、鼻からくんくん小さく嗅ぎ、10秒間続けます(この時、深呼吸をしないようにしましょう。小さく鼻の中に香りを広げるイメージです。)③ 嗅ぎ終わったら、1分間ほどリラックスして休みます。④ 続けて同じ要領で繰り返して、計3種類の香りを嗅ぎます。⑤ これを朝晩2回、12週間続けます。 まとめ 嗅覚障害は、あまり重要な後遺症として認識されていませんが、実は私たちの生活の質や精神的な健康にも大きな影響を及ぼします。匂いは味と食欲にもつながっており、嗅覚が失われると、たいていは食事の楽しみも奪われてしまいます。嗅覚の異常によって、社会的な孤立感や、喜びを感じられなくなる症状が出たり、記憶や感情も匂いと密接につながっていることから、精神面においても、嗅覚は重要な役割を果たしているといえます。嗅覚が障害されている期間が長いほど治りにくいことがわかっているため、より早期の診断と治療開始が重要になります。 きずなクリニックでは、コロナウイルス感染後に起こる後遺症に対するケアに力を入れています。特に嗅覚に異常を感じていらっしゃる方は、早めの対応により改善が見込める場合が多いため、何なりとご相談頂ければと思います。そのほかの健康面でのご相談も、WhatsAppやお電話で24時間受け付けております。お気軽にご連絡いただければと思います。 健康相談をする