正しく知ろう! 新型コロナワクチンと免疫について

ワクチンと免疫
男性患者

鈴木さん

私はまだ新型コロナワクチンを接種すべきか悩んでいます。
新しいワクチンで不安だし、本当に効果があるのかどうかも疑問です。

新型コロナウイルス感染症を抑える切り札として、ワクチンが登場しましたね。
ワクチン接種に対する様々な意見がありますが、先ずは新型コロナワクチンがどのようなものか、
そして接種することによってどのような効果があるのか正しく知る必要があります。

きずなクリニック医師

医師

この記事は、きずなクリニックの医師である マチルダがお話します。

2021年1月に新型コロナウイルス感染症がパンデミックを起こしてから1年半以上が経過しました。
2021年10月10日現在で、感染者は、2.19億人、死者は455万人に達していますが、2021年に入ってから、この難局を
打開すべく有望な「新型コロナワクチン」が次々と登場してきました。

通常ワクチンの開発には最低でも10年以上の年数がかかるとされていますが、今回の新型コロナウイルスワクチンは、
ウイルスが報告されてからわずか1年足らずで開発されています。

このため、安全性や有効性について様々な意見が出ているわけですが、ここでは

1.新型コロナワクチンとはどんなワクチンなのか。
2.ワクチンを接種することで期待される効果
3.ワクチン接種の最終目標とされる集団免疫

について解説します。

きずなクリニックはインドネシア・ジャカルタにある日系クリニックです。
14年間ジャカルタで日本人の健康をサポートしてきた、豊富な経験を持つ医師と 日本の看護師資格を持つ看護師
および日本人の医療関係者がアドバイザーとして常駐しています。

日本とは異なる環境の中で病気になると、言葉・医療体制・治療方法など、不安に感じることも多いことでしょう。
きずなクリニックでは、ひとりひとりの患者さんの不安に寄り添い、確かな医療技術と日本の医療を熟知したスタッフが
患者さんとともに最良の方法を一緒に探していくことを目指しています。
病気の時だけでなく、健康面で気になることがある場合には、どんなことでもお気軽にご相談ください。

様々なワクチン

かつて「天然痘」という病気がありました。この病気を何とかしようと、世界で最初にワクチンを作ったのが、
イギリス人医師のエドワード・ジェンダーでした。

ワクチンのコンセプトは、軽い病気になって、重病を防ぐというもので、ワクチンを接種することにより、体に備わっている
免疫細胞が活動し始め、ワクチンに含まれているタンパクに対する抗体を作り出します。

ワクチンは下記のように様々な種類がありますが、これまでのワクチンは、ウイルスや細菌の病原体を弱毒化したり、
ウイルスや細菌の一部を合成して作られるものでした。

生ワクチン:細菌やウイルスなどの病原体の毒性を薄めて投与し、実際に病原体に感染させ、それにより病原体に対する免疫を
つけさせるもの。実際にその病気にかかった場合と同じくらい強い免疫が付くため、接種回数が少なくて済むという特徴がある。

不活化ワクチン:生きていない病原体を使うワクチン。体を守るための免疫が作られるが、実際に感染が起こるわけではないので、
免疫反応が若干弱いという欠点がある。

コンポーネントワクチン:病原体の一部だけをワクチンとして使うもの。「成分ワクチン」、「組み換えタンパクワクチン」などと
呼ばれることもある。体を守るための免疫は作られるが、不活化ワクチン同様、免疫反応は弱く副反応は比較的起こりにくいという
特徴がある。

このように従来のワクチンは、生ワクチンでも、不活化ワクチンでも、コンポーネントワクチンでも、ウイルスや細菌そのもの、
あるいは断片や成分としてのタンパク質を接種していました。

これに対し、新型コロナワクチンは、タンパク質を作るための遺伝情報をのせた分子を投入し、人体でタンパク質そのものを
作らせようとするものです。
ターゲットとなるウイルスや細菌の抗原の遺伝子配列が分かれば、比較的短期間で作ることができるのが特徴です。

mRNAワクチン:ウイルスのRNAを人工の脂の膜にくるんでヒトに投与するワクチン。人体の細胞内に入った後、
ウイルスの一部であるタンパク質が作られ、そのタンパク質に対して抗体が作られる。


ウイルスベクターワクチン:
ベクター(運び屋)といわれる無毒化したウイルスにDNAを入れてヒトに投与するワクチン。
体内でタンパク質(抗原)が作られ、免疫反応を起こす。比較的高い免疫が期待できるが、複数回の接種が難しいという特徴がある。

ワクチンによって期待できる効果

ワクチンの効果

新型コロナワクチンは、
① 本人及び周囲への感染予防(ワクチンを接種した人が感染しない、 周囲にも感染を広げない)
②発症予防(発症者が減少する)
③重症化予防(死亡・入院などの重症患者が減少する)

の3つの効果が期待されています。

私たちの周りには様々な病原体が存在しますが、病原体の侵入・拡散を防ぐ「自然免疫」・「獲得免疫」という
2つの免疫機構が備わっているため、簡単には感染症には罹りません。

ワクチンというと、「獲得免疫」=抗体による感染防御効果ばかりが強調されますが、実は、ワクチンは、
「自然免疫」および「獲得免疫」の双方の力を強化する薬なのです。

 

自然免疫とは?

病原体の侵入によって誘導されるのではなく、健康な人にはもともと備わっている仕組みです。
相手を細かく特定せず、体にとって異物と認識するとすぐに攻撃を開始し、不特定多数の相手を対象に攻撃を行いますが、
攻撃力がやや弱く、かつ、一度入ってきた病原体をよく覚えておらず、再び同じ病原体が入ってきても、前と同じような反応を
します。
存在する場所:皮膚表面の角質、気道・腸管表面の粘液、口の中のだ液、目の表面を覆う涙など

 

獲得免疫とは?

生後に感染経験とともに獲得する免疫の仕組みです。
自然免疫を突破して体内に侵入してきた病原体に対して抵抗する役割を持ち、特定の決まった相手だけを攻撃対象とします。
一度体内に侵入した相手をしっかりと記憶し、その相手が再度侵入した時に攻撃を行いますが、その攻撃力は強力で、
同じ病原体が侵入するたびに増幅されて、反応が早くなります。
これは、獲得免疫として働くリンパ球が「記憶」を持つためです。

リンパ球には主にT細胞とB細胞があり、T細胞はヘルパーT細胞・キラーT細胞に分かれます。
ヘルパーT細胞は、獲得免疫の中の司令塔に相当し、病原体の侵入を感知すると B細胞に指令を出し、抗体を作らせます。
抗体は血液や体液中に存在する病原体を殺します(=体液性免疫といいます)。

さらにヘルパーT細胞はキラーT細胞にも指令を出し、活性化させます。
病原体が細胞に感染し、細胞内で増殖すると抗体では対抗できず、感染した細胞自体を殺さなければ完全に排除すること
ができません。キラーT細胞はこのような感染した細胞を殺す役割を行います(=細胞性免疫といいます)。

このように体の免疫は2段構えになっており、自然免疫と獲得免疫が順番に働くことで、異物を排除する仕組みになっています。

 

新型コロナワクチンを接種することで、体は病原体からの攻撃に備えた状態を作るため、自然免疫だけでなく、
より素早く獲得免疫を発動させることができるようになります。
つまりワクチンの効果は、獲得免疫の「抗体」だけではなく、自然免疫と獲得免疫の総合力で決まります。
そのため、獲得免疫の抗体が多少減少したとしても、抗体に頼らないキラーT細胞などを刺激して、細胞性免疫の力も
利用しながらウイルスに対抗することができるようになるのです。

集団免疫

集団免疫

ワクチンを接種することで得られる効果として、集団免疫を忘れてはなりません。

集団免疫とは、 特定の集団が感染症にかかるか、あるいはワクチン接種をすることにより、多くの人が免疫を獲得し、
それにより集団全体が感染症から守られるようになる現象のことです。

集団の中で免疫を持っている人が一定割合以上いると、感染するのは一部の人に限られ、集団の大部分には感染が
広がらなくなります。あたかも集団全体が免疫を持っていて、特定の感染症から守られているように見えることから、
「集団免疫」とよばれています。

流行当初、新型コロナウイルス感染症に対する集団免疫は、60~70%の接種率で達成できる可能性があると試算されていました。
この値は、ウイルスなどの感染しやすさを表す指標のひとつ「基本再生産数(R0)」から算出でき、新型コロナウイルスの場合、
R0は当初2.5程度とされていました。

ところが2021年になり、新たなデルタ株の出現によって この再生産数は ”5以上” であると報告され、デルタ株を基準に
集団免疫を試算すると、75~86%の人がワクチンや感染により免疫を獲得する必要があることが分かってきました。

これまで、これほど高い集団免疫を達成した国はほとんどありませんが、それでも いち早くワクチン接種を行ったイスラエルの
例をみると、広範囲にワクチン接種を行うことで、明らかに重症者数・死者数が大幅に減少することが分かっています。
パンデミック終息にはワクチン接種による集団免疫の獲得が重要な鍵となりそうです。


まとめ

新型コロナワクチンは、これまでのワクチンとは異なり、タンパク質を作るための遺伝情報をのせた分子を投入し、
人体でウイルスのタンパク質そのものを作らせようとするものです。

ワクチンの効果としては、

① 本人及び周囲への感染予防(ワクチンを接種した人が感染しない、 周囲にも感染を広げない)
②発症予防(発症者が減少する)
③重症化予防(死亡・入院などの重症患者が減少する)

の3つが期待されています。

多くの人がワクチンを接種することで、「集団免疫」を獲得することができ、パンデミック終息の鍵になると考えられます。

きずなクリニックでは、ワクチン接種後の免疫獲得状況を測定する一つの指標として抗体価検査を行っております。
そのほか、コロナウイルス感染後に起こる後遺症に対するケアにも力を入れています。

健康面でのご相談は、WhatsAppやお電話で24時間受け付けております。
お気軽にご連絡いただければと思います。