佐藤さん
新型コロナウイルスワクチンを2回接種し、 3カ月経ったので再度抗体価を調べたら、かなり下がっていました。
ブースター接種をした方がいいのか悩んでいます。
2021年8月頃からブースター接種を開始する国が出てきましたね。
ブースター接種の効果、副反応などの報告も出てきていますので、色々な情報を加味しながら
慎重に検討する必要があると思います。
医師
この記事は、きずなクリニックの医師である マチルダがお話します。
ブースター接種による様々な報告が出てくる中で、現在分かっていることは、
「新型コロナワクチンの感染予防効果は時間の経過とともに低下する」が、「重症化予防効果は保たれ」、そして、
「ブースター接種によって感染予防効果は再び上昇する」ということです。
これを受けて、私たちは慎重に本当にブースター接種が必要なのかを考える必要があると思います。
ここでは情報の整理とともに、
1.ブースター接種とは何か
2.ブースター接種は本当に必要なのか
3.ブースター接種を行う際のワクチンの選定方法
について解説します。
きずなクリニックはインドネシア・ジャカルタにある日系クリニックです。
14年間ジャカルタで日本人の健康をサポートしてきた、豊富な経験を持つ医師と 日本の看護師資格を持つ看護師
および日本人の医療関係者がアドバイザーとして常駐しています。
日本とは異なる環境の中で病気になると、言葉・医療体制・治療方法など、不安に感じることも多いことでしょう。
きずなクリニックでは、ひとりひとりの患者さんの不安に寄り添い、確かな医療技術と日本の医療を熟知したスタッフが
患者さんとともに最良の方法を一緒に探していくことを目指しています。
病気の時だけでなく、健康面で気になることがある場合には、どんなことでもお気軽にご相談ください。
目次
ブースター接種とは・・?
免疫システムには、体に侵入したウイルスなどの病原体の特徴を記憶し、次に同じ病原体が入ってきたときに、
“より早く・より強く”排除する働きがあります。
予防のために接種するワクチンは、このしくみを利用し、あらかじめウイルスなどの特徴の一部を体に覚えさせ、
実際の感染に備えるものです。
しかしながら、ワクチンによって免疫の記憶が作られても、その記憶をもとに働く予防効果は、実際の感染で作られる
ものよりも早く薄れてしまうことがあります。
そこで、一度作られた免疫の記憶を、追加のワクチン接種で刺激して、低下した予防効果をもう一度「押し上げる」こと
をねらうのが「ブースター接種」です。
ブースターは英語のboost(押し上げる)に由来しています。
最近では、表1に示すように「ブースター接種」を始める国が出てきています。
ブースター接種は本当に必要なのか?
新型コロナワクチンの有効性については、経時的に減少する可能性が指摘されています。
その一つが左図に示すように「感染予防効果が時間の経過とともに低下する」というものです。
このため、一部の国においては、上述したように 2回のワクチンを接種後、一定の間隔をおいて、追加接種を実施する方針が打ち出されています。
一方で、ブースター接種の必要性を疑問視する見解の根拠として、感染予防効果が下がった場合においても
下図のように「重症化の予防効果は十分にある」という主張があります。
そもそも、新型コロナワクチンには、
① 本人及び周囲への感染予防(ワクチンを接種した人が感染しない、 周囲にも感染を広げない)
②発症予防(発症者が減少する)
③重症化予防(死亡・入院などの重症患者が減少する)
の3つの効果が期待されています。
ワクチンが人体を刺激することで産生される抗体(=中和抗体:ウイルスを無力化する抗体)は、①の感染予防に効果を
発揮しますが、残念ながら時間の経過による減少がどうしても避けられないことから、感染予防効果をワクチンで長期に
わたって得ることは、難しいというのが現状です。
ただし、ワクチンによって活性化されるのは抗体を作る「液性免疫」だけではなく、「細胞性免疫」という別の免疫機構
もあります。この細胞性免疫は重症化や死亡を防ぐのに強力な武器となります。
細胞性免疫の特徴として、書き込まれた「免疫記憶」の効果が表れるまでに数日を要するものの、しっかりとした効果が
何カ月にもわたって維持されることから、感染予防効果が薄れた後でも、重症化予防には高い効果を発揮することが
分かっています。
しかしながら、細胞性免疫は測定が難しいため、抗体のように目に見えた形で知ることが出来ないという欠点があります。
以上のように、抗体価が低く感染予防効果があまり期待できない場合でも、重症化を防ぐ効果は認められることから、
ブースター接種する必要性は低いというのがブースター接種を疑問視する根拠の一つです。
その他、ブースター接種のメリット・デメリットを表 2 に示します。
ブースター接種を行う際のワクチン選定方法
ワクチンの種類ごとにブースター接種の方法が異なります。
下表3 にワクチン種類別のブースター接種の方法等を示します。
表3 ワクチンの種類ごとのブースター接種の方法
製薬メーカー・ 研究機関 | シノファーム社 (中国) | シノバック社 (中国) | アストラゼネカ社・ オックスフォード大学 (イギリス) | ファイザー社 ビオンテック社 | モデルナ社 (アメリカ) |
種類 | 不活化ワクチン | 不活化ワクチン | ウイルスベクターワクチン | mRNAワクチン | mRNAワクチン |
有効率 | 50.4~90% (治験国によって差がある) | 79.3~86% (治験国によって差がある) | 76%(1回目) 82%(2回目) | 95% | 94.1% |
ブースター 接種の方法 | 2回目の接種から3か月後に別の種類のワクチン(mRNAワクチンあるいはウイルスベクターワクチン)接種を推奨。 ただし、インドネシア政府はまだ一般の人に向けて正式にブースターを承認しておらず、ブースターが開始されるのは11月または12月頃になる予想 | 設計図の運び屋として使用したウイルスに対する抗体を作ってしまうため、ブースター接種が出来ない可能性が指摘されていた。 開発を行ったOxford Vaccine Groupからは、現在のところブースター接種は必要ないとの報告。 | 効果は約半年程度続くとされているが、ブースター接種が欧米で導入されるなど、世界的に実施の流れになっている。日本も今後の感染流行の抑制に向け、8カ月の間隔を空けて、ブースター接種を実施する見通しになっている。 ブースター接種には、基本的に同じ種類のワクチン接種を推奨。モデルナをブースター接種する場合には、用量を半量とする。 |
まとめ
新型コロナワクチンおよびブースター接種について現在分かっていることは、
1.新型コロナワクチンの感染予防効果は時間の経過とともに低下する
2.重症化予防効果は保たれる
3.ブースター接種によって感染予防効果は再び上昇する
ということです。
ブースター接種の検討に当たっては、ワクチン接種後の抗体価だけでなく、接種した場合メリット・デメリットや、
ご自身の生活環境、感染・重症化リスクなども考慮して決定することが重要です。
きずなクリニックでは、ワクチン接種後の免疫獲得状況を測定する一つの指標として抗体価検査を行っております。
そのほか、コロナウイルス感染後に起こる後遺症に対するケアにも力を入れています。
健康面でのご相談は、WhatsAppやお電話で24時間受け付けております。
お気軽にご連絡いただければと思います。