長引く咳で苦しむ患者

長引く咳、止まらない咳・・・その原因は?

長引く咳で苦しむ患者
男性患者

鈴木さん

風邪を引いた後、ずっと咳だけが続いています。
もうかれこれ3週間以上になりますが、何か悪い病気なのでしょうか。

最近なかなか咳が止まらない、風邪の後咳だけが残っているという症状で受診される方が増えていますね。
中には2カ月以上咳がずっと続いておられる方もおられます。

通常 風邪などの感染症が原因の咳は、3週間も続きません。
3週間以上続く咳は感染症以外が原因の可能性が考えられます。

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医師

この記事は、きずなクリニックの呼吸器専門医である アディティアがお話します。

そもそも咳とは、吸い込んだ異物(細菌・ウイルス・ほこりなど)を外へ出そうとする体の防御反応です。
咳き込んですぐにおさまる咳であれば、異物を出すために起こっているので、無理に止めなくてもいい咳です。
「風邪を引いた後、他の症状はおさまったのに咳だけ残る」、「咳と痰の症状だけが 出続ける」などの症状がある方は、
感染症以外の別の病気が隠れている可能性があります。

今回は、
1.長引く咳とは?
2.咳が出やすい時間帯で、原因が分かる?
3.痰の性状・色により疑う病気とは?
4.長引く咳の原因3つ

について解説いたします。

きずなクリニックはインドネシア・ジャカルタにある日系クリニックです。
14年間ジャカルタで日本人の健康をサポートしてきた、豊富な経験を持つ医師と 日本の看護師資格を持つ看護師
および日本人の医療関係者がアドバイザーとして常駐しています。

日本とは異なる環境の中で病気になると、言葉・医療体制・治療方法など、不安に感じることも多いことでしょう。
きずなクリニックでは、ひとりひとりの患者さんの不安に寄り添い、確かな医療技術と日本の医療を熟知したスタッフが
患者さんとともに最良の方法を一緒に探していくことを目指しています。
病気の時だけでなく、健康面で気になることがある場合には、どんなことでもお気軽にご相談ください。

長引く咳とはどんな咳

「長引く咳」とはいったいどういう咳なのでしょうか。

咳の症状は、以下の様に続いている期間で3つに分類され、そのうち ②および③が、「長引く咳」とされます。

①3週間未満 「急性の咳」:インフルエンザや急性気管支炎などの感染症が原因

②3週間以上~8週間未満 「遷延性の咳」:咳喘息、副鼻腔炎、胃食道逆流症などが疑われる

③8週間以上 「慢性の咳」:咳喘息、気管支喘息が疑われる

通常 風邪などの感染症が原因の咳は、3週間も続きません。
3週間以上続く咳は上記の様に感染症以外が原因の可能性が高くなります。

咳が出やすい時間帯で、原因が分かる?

時間帯ごとの咳の出る原因

咳の原因を見分ける際に注目したい特徴のひとつに、咳がよく出るのが朝なのか夜なのかというタイミングがあります。


【咳が出る時間帯と可能性の高い原因疾患】
①早朝に咳が出る     :気管支喘息、咳喘息

②起床後~午前中に咳が出る:アレルギー性鼻炎、後鼻漏

③日中に咳が出る     :後鼻漏

④就寝後に咳が出る    :気管支喘息、咳喘息、逆流性食道炎

痰の性状・色により疑う病気とは?

痰の性状と色による咳の原因の分類

痰には異物をからめとって外に出す働きがあります。
痰が出るのは悪いことではないですが、特徴的な痰が出たり、絡んだりする場合には
その性状や色により特定の病気を疑う手掛かりとなることがあります。

痰の性質

状態

考えられる病気

漿液性

粘り気がなくサラサラ

透明~白

・肺胞上皮癌、気管支喘息など

粘液性

粘り気がある

透明~白

・非細菌性(ウイルスなど)の感染症

・アレルギー性気管支炎
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)

膿性

細菌・白血球、粘液

黄色

さび色

・細菌性の感染症が多い(急性咽頭炎、急性気管支炎など)

・緑膿菌が関係している(びまん性汎細気管支炎、慢性気管支炎など)

・肺炎球菌と関係している(肺炎球菌性肺炎、肺膿瘍など)

血痰

痰に血が混ざっている

茶色

暗赤色

下気道からの出血が多い(肺がん、気管支拡張症、肺結核症など)

長引く咳の原因

逆流性食道炎で咳が出る

原因①「咳喘息」

痰を伴わず、就寝時や深夜から明け方に強く咳が出て、冷気・暖気、受動喫煙、会話、運動、飲酒、精神的緊張、
低気圧など日常の様々な刺激によって誘発されます。

気道の粘膜が炎症を起こして過敏になり、小さな刺激でも反応して咳が出ている状態で、
アレルギー体質が関与していると考えられます。
花粉症、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどを持つ方は、咳喘息を発症しやすいですが、
それ以外にも、風邪やインフルエンザなどの感染症を契機に発症することがあります。

通常の喘息と異なり喘鳴(ぜいぜい、ヒューヒュー)は起こりませんが、のどの違和感「イガイガ感」、
「しめつけ感」、のど~気管のあたりが重たいという症状が出ることがあります。

放置すると気管支喘息に移行することがありますので、早期に治療が必要です。

治療薬としては吸入ステロイド薬や気管支拡張薬の吸入を使用します。

原因②「後鼻漏(副鼻腔炎またはアレルギー性鼻炎)」

分泌された鼻汁が喉に落ちて刺激となり、それによって咳が誘発されます。
これは喉に落ちた鼻汁を異物ととらえ、体外に排泄しようとする結果です。

アレルギー性鼻炎や慢性の副鼻腔炎の場合、鼻水・鼻詰まりに加えて後鼻漏が頻繁に起こり、 鼻の粘膜も腫れるため、
咳が長引いてしまいますが、こうした鼻が原因の長引く咳は、意外にご本人がアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎を
もっていることに、気づいていないケース が少なくありません。

後鼻漏が原因の咳は、朝起きてすぐ、また日中も咳が出ることがありますが、咳が一旦出るとしばらく止まらず、
痰が出きると咳がピタッと止む傾向にあります

鼻が原因の咳の場合は、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎を治療すると咳も徐々に治まってきます。
副鼻腔炎がある場合は抗生物質が、アレルギー性鼻炎の場合は、抗アレルギー薬の内服が必要です。

原因③「逆流性食道炎」

逆流性食道炎とは、胃酸が食道へ逆流することにより、食道の粘膜が炎症を起こす病気です。
食道の一番上の部分は、肺につながる気管の入口=咽頭と接していますので、
食後すぐに寝入ったり、逆流が強かったりすると、胃酸の刺激で咽頭の粘膜にも炎症が起き、
咳や嗄声(声がれ)といった症状が出ます。

長引く咳の原因のうちの5-8%程度が、逆流性食道炎が原因であると言われています。

肥満や最近体重が増加した人や、食後や夜横になったときに症状が出やすい傾向があります。
また、喉の押される感じや喉の違和感があることが多いのも特徴です。

治療には、胃酸分泌抑制薬(=プロトンポンプ阻害薬)が使用されます

まとめ

風邪などの感染症が原因の咳は、「急性の咳」で 通常3週間以内におさまります。
3週間以上咳が続いている場合は、感染症以外の「咳喘息」、「後鼻漏(副鼻腔炎またはアレルギー性鼻炎)」、
「逆流性食道炎」などの可能性も考えらえます。

咳によって体力を消耗したり、生活に支障をきたすだけでなく、そのまま放置すると症状が悪化したり、
完治が困難になることもあります。

咳が3週間以上続いておられる場合は、医療機関へ相談されることをお勧めします。

また、咳の出るタイミングや痰がある場合には、その性状や色によって 疑いのある疾患を特定する
手掛かりになることがありますので、受診の際には出来るだけ詳しい情報を医師に伝えるようにしましょう。

きずなクリニックでは、新しく呼吸器専門医を迎え、「長引く咳」の治療にも力を入れています。

「この咳、一体いつ止まるの?」、「風邪を引いた後、他の症状はおさまったのに咳だけ残る」、
「咳と痰の症状だけが 出続けている」などの症状でお悩みの方は是非当クリニックにご相談ください。

健康面でのご相談は、WhatsAppやお電話で24時間受け付けております。
お気軽にご連絡いただければと思います。