インドネシアでも報告されている
ハンタウイルス感染症について
「ただの風邪」だと思っていませんか?
最近、インフルエンザや新型コロナウイルスなどが注目されていますが、実はインドネシアには以前から「ハンタウイルス」という感染症が存在しています。
ハンタウイルスは1984年からインドネシア国内で報告されており、特にネズミが多い環境で感染する可能性があります。
日本ではあまり耳にしない病気ですが、インドネシアで生活する日本人の方にも知っていただきたい感染症の一つです。
今回は当クリニックの医師アニサがハンタウイルスについて分かりやすく解説します。
ハンタウイルスとは?
ハンタウイルスは、主にネズミやトガリネズミなどの小動物が保有しているウイルスです。
これらの動物は感染していても元気に見えるため、周囲の人は気付くことができません。
人に感染すると重症化することがあり、地域によっては致死率(死亡率)が高いことでも知られています。
インドネシアで感染する可能性はあるの?
あります。
実際にインドネシア保健省でもハンタウイルス感染症について注意喚起が行われています。
最近のインドネシア国内報告(2024~2026年)インドネシア保健省の発表では、
<2024年~2026年4月>
疑い症例(suspected case):251例
確定陽性:23例
死亡:3例
致死率:約13%
とされています。
特に以下のような場所では注意が必要です。
- 長期間開けていない倉庫
- 物置
- ガレージ
- 空き家
- 農地や畑
- 市場周辺
- ネズミが多い住宅地
日本人駐在員やそのご家族が居住する住宅でも、天井裏や倉庫にネズミが入り込んでいることがあります。
どのように感染するの?
多くの方が「ネズミに噛まれなければ大丈夫」と思っていますが、実際にはそれ以外の感染経路がほとんどです。
最も多い感染経路は、
ネズミの尿や糞が乾燥し、それが細かいホコリとなって空気中に舞い上がり、それを吸い込むこと
です。
その他にも、
- ネズミの糞や尿に触れた手で口や鼻を触る
- 汚染された食べ物や飲み物を口にする
- 傷口からウイルスが侵入する
- ネズミに噛まれる
などで感染する可能性があります。
どんな症状が出るの?
感染してから症状が出るまでの期間は通常1~8週間程度です。
初期症状は風邪やインフルエンザによく似ています。
初期症状
- 突然の高熱
- 強い頭痛
- 全身のだるさ
- 筋肉痛
- 腰痛
- 太ももの痛み
そのため、単なる風邪と思われることがあります。
重症化するとどうなるの?
アジアでみられるタイプでは、
- 血圧低下
- 出血傾向
- 腎機能障害
- 急性腎不全
が起こることがあります。
またアメリカ大陸でみられるタイプでは、
- 咳
- 息苦しさ
- 肺に水がたまる
などの重症肺炎のような症状を起こします。
治療法はあるの?
現在、一般的に使用できる特効薬はありません。
また、広く使用されているワクチンもありません。
そのため、
- 点滴
- 酸素投与
- 集中治療
など、体を支える治療が中心になります。
重症化する前に医療機関を受診することが非常に重要です。
インドネシア在住の日本人の方への注意点
以下のような状況があった場合は特に注意してください。
✅ 長期間閉め切った部屋や倉庫を掃除した
✅ 天井裏や物置でネズミの糞を見つけた
✅ 農作業やガーデニングをした
✅ ネズミの出没が多い住宅に住んでいる
その後、
- 発熱
- 強い倦怠感
- 筋肉痛
- 息苦しさ
などが出現した場合は、医療機関で「ハンタウイルスの可能性が心配です」とお伝えください。
ご家庭でできる予防法(3つのS)
① Safe Cleaning(安全な掃除)
ネズミの糞を見つけても、
❌ いきなり掃除機をかける
❌ 乾いた状態でほうきで掃く
ことは避けてください。
まず消毒液を十分に噴霧し、5分ほど置いてから拭き取るようにしましょう。
② Seal and Secure(侵入口をふさぐ)
- 壁の隙間をふさぐ
- 食品は密閉容器に保管する
- ペットフードも放置しない
ことが大切です。
③ Soap is Your Defense(手洗い)
掃除後や屋外作業後は、石鹸を使って40~60秒かけて手を洗いましょう。
まとめ
インドネシアでは2024年以降に少なくとも23例のハンタウイルス感染が報告されており、死亡例も確認されています。感染頻度は高くありませんが、ネズミとの接触機会が多い環境では感染リスクが存在します。特に長期間閉鎖されていた倉庫や物置の掃除後に発熱や強い倦怠感が出現した場合には、早めに医療機関へ相談することが重要です。
特効薬がないため、「感染しないこと」と「早めに気付くこと」が最も重要です。
特に、倉庫や物置の掃除後に発熱や強い倦怠感が出た場合は、単なる風邪と自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。 インドネシアではネズミとの接触機会が日本より多い環境もあるため、日頃から住環境の清潔管理とネズミ対策を心掛けましょう。

